スピードランナーは、ゲームをただプレイするだけでなく、可能な限り速くクリアしてその記録を競い合う。「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」の場合、普通の人が50時間かけてクリアするところを、スピードランナーたちは1時間強でクリアしてしまう。その陰には周到な準備や戦略があった。 初めに大記録を打ち立てたのは、ネット上でGymnast86として知られるアメリカ人プレイヤー、カール・ワーニックだった。その記録は1時間34分33秒だ。ワーニックは10年ほど前から「ゼルダの伝説」のスピードランナーとして活動している。「普通にプレイするのとはまったく違う体験で、どちらも好きなんです」とワーニックは語る。「このゲームをじっくり冒険するのもとても楽しかったですし、クリア後もプレイし続けるつもりです」 「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」は、クラフトの自由度が高すぎてストーリーがまったく進まないBy Megan Farokhmanesh 「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」のクリエイターが語る、ゲーム世界を自由で豊かにする方法By Megan Farokhmanesh ワーニックは5月12日に動画を投稿し、すぐに更新されてしまうだろうといいながら(実際そうなった)、自身の記録について解説した。どんな武器を使い、スクラビルドでどんな素材を融合させ、それぞれのボスを倒していったのか。前作「ブレス オブ ザ ワイルド」にあったようなバグ技は今作では存在していないし、amiiboを使って強力な武器や名馬エポナを入手することもしない。ワーニックはひたすらボス戦を磨き上げることで記録を出したのだ。「タイムを縮めながらも、再現性の高いルートを確立する必要があります」 ワーニックはこの記録に関して明言しておきたいことがあるという。「どうやら、ゲームのリリースと同時に、何の練習や構想もなくこの記録が出たと誤解している人がいるようです。もしそうだとしたらすごいと思いますが、そんなわけありません」 この記録を出したころ、ワーニックはすでに35時間もこのゲームをプレイしていた。発売日前からリークされたバージョンで練習していただけでなく、少しでもほかのプレイヤーと差をつけられるようにとオーストラリア版のeショップでゲームを購入し、またロード時間の差を検証するためにカセット版も購入していた。今作が「ブレス オブ ザ ワイルド」の続編であることも有利に働いた。基本のシステムや操作が共通していたため「まったく違う環境に慣れる必要はなく、すぐに動き回ることができました」とのことだ。 「ティアーズ オブ ザ キングダム」のディレクターである藤林秀麿によると、用意された道筋を通らない型破りなプレイヤーがいるであろうことを、開発チームは予測していたという。例えば、誰かがゲームの序盤からハイラル城に潜り込める方法を見つけてしまったら、ゲームは成り立たない。今後その方法が見つかる可能性もあるが、藤林は「そういった可能性も考慮しています。完全に壊されてしまうことのないようにゲームをつくっていますから。もちろん、その可能性がまったくないとも言い切れないですが」と語る。
ゲームは壊されるためにある
プレイヤーたちはすでに細かなところでゲームの抜け道を発見し、便利な使い方を編み出している。とあるツイッターの投稿では、プレイヤーが木の板とリンゴを使ってゲームをだまし、魔法の絨毯に乗っているかのようにマップを飛び回っていた。こうしたバグ技の発見はスピードランナーのコミュニティにとってよい知らせとなる。ワーニックによると、ゲームのコードを書き換えられるようなものでない限り、ほとんどのバグは“フェア”であるという。「いまのところ、今作ではアンフェアなバグは見つかっていないですね」